月刊「士業判断ノート」
不動産売却の現場で起きた、士業の先生、売主、買主など、
さまざまな人の判断や実際に交わされた言葉をお届けします。
だから、不動産は面白い
■ 掲載記事の一例(2026年10月号)
| 「それだったら、税金のことが分かっていないと難しいかもね。」 税理士の先生から、ご自身も共有者の一人となっている収益物件の売却をご依頼いただきました。店舗として貸している物件で、所有者は3人。そのうちのお一人がアメリカに住んでいます。 媒介契約を結ぶ前に、先生と売買契約書のひな型を確認していたときのことでした。アメリカに住んでいる共有者の話になると、先生が何気なく言われました… ▽ 続きを読む ▽ |
| 「一人アメリカに住んでいるから、源泉徴収が必要だね。」 海外に住む人が日本の不動産を売却する場合、一定の要件に該当すると、買主が売買代金から所得税等を源泉徴収して納付することになっています。 不動産を売るのは売主なのに、源泉徴収の手続きをするのは買主です。先生の一言から、今回の売却には、買主にもしてもらわなければならないことがあると分かりました。 -------- アメリカに住んでいる共有者の持分は3分の1です。そこで気になったのが、源泉徴収の対象になる金額でした。不動産全体の売買代金なのか、それとも、その人の持分にあたる部分だけなのか。 今回の契約条件を整理するため国税庁に確認したところ、アメリカに住んでいる共有者の持分に応じた売買代金が対象になるとのことでした。 その内容を売買契約書の特約に加え、先生にも見ていただきました。「あ、これでいいと思います。」これで一つ、契約書の準備が整いました。 -------- 契約書の準備を進めるうちに、もう一つ気になることが出てきました。 源泉徴収をするのは買主です。買主は売買代金を支払うだけではなく、源泉徴収した税金を期限までに納付しなければなりません。 その話をしていると、先生が言われました。「それだったら、税金のこととかよく分かっていないと難しいかもね。」 私はそれまで、契約書の特約をどうするかということを考えていました。けれども先生の言葉を聞いて、契約書に書いてあることと、買主がその内容を理解して実際に手続きをしてくれることは、同じではないことに気づきました。 先生もそのことを気にされていました。「買主が源泉徴収税を支払うのに、スピーディーに対応してもらわないとトラブルになりそうやね。」 考えてみれば、売買契約を結んでから買主に説明するのでは遅い話です。この物件を買うと、通常の売買では必要のない手続きがある。そのことを、買主を探す段階から伝えておく必要があります。 -------- 今回の物件は、競争入札(R-auction®)で売却する予定でした。 できれば複数の買主から価格を提示してもらい、その中から高い価格をつけた買主に売りたい。一方で、今回については価格だけでなく、源泉徴収の手続きを理解して対応してもらえることも必要です。 そこで、今回必要となる手続きをあらかじめ伝えたうえで、買主を募ることになりました。 最初に売買契約書を開いたとき、私が考えていたのは、非居住者の源泉徴収を特約にどう書くかということでした。先生と話をしながら一つずつ確認していくうちに、契約書の話から、買主に何を伝えておくのかという話になり、さらに、どのような買主に参加してもらうのかという話になっていました。 一人の共有者がアメリカに住んでいる。売買契約書のひな型を確認していたときに先生が口にされた一言から、契約書だけではなく、買主のことまで考えることになりました。 担当:大﨑智哉 |
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