売却方法の選択構造

~ どの方法で売るかは「価格決定主体」を選ぶ行為である ~

※本ページは「不動産判断の構造マップ」における「➁ 売却方法選択の構造」に位置づけられています。


不動産売却において「どの方法で売るか」は、単なる手続選択ではありません。士業が関与する実務においては、どの売却方法を選ぶか=価格を誰の判断で決めるかを選ぶ行為という意味を持ちます。本稿では、売却方法を「価格が誰の判断によって決まる構造か」という観点から整理します。

1.売却方法とは「価格決定主体」の選択である

一般的な不動産取引では、売却方法は手続や流れの違いとして語られがちです。しかし、士業が関与する案件では、次の問いが常に伴います。


| この価格は、誰が決めたのか?

・売主か
・不動産会社か
・特定の買手か
・市場(複数の買手)か


売却方法の違いとは、価格決定主体の所在が異なることにほかなりません。

2.売却方法と価格決定主体の整理

当社では、実務上の判断整理として、売却方法を次の4類型に分類しています。

売却方法主な価格決定主体構造上の特徴
競争入札型市場(複数の買手)競争結果として価格が決まる
比較型限定された市場複数条件の比較によって決まる
価格明示型売主または選任者価格が事前に固定される
買取型不動産会社目的合理性により価格が決まる

※ 本分類は一般用語ではなく、士業実務における判断整理のための構造的整理です。

3.競争入札型

― 市場が価格を決める構造 ―


競争入札型では、価格決定主体は売主でも不動産会社でもありません。複数の買手が独立した評価を行い、競争の結果として価格が決まります。


この構造では、

・誰か一人の判断に依存しない
・価格は結果として示される
・市場が判断主体となる


という特徴を持ちます。

4.比較買取型

― 限定された競争による価格形成 ―


比較型は、複数の条件や提示価格を並べて比較し、その中から選択する構造です。

・単独判断にはならない
・競争は限定的
・比較プロセスが存在する


という点で、価格明示型よりも価格決定主体は分散します。

5.価格明示型

― 価格決定主体が固定される構造 ―


価格明示型では、売主または選任者が事前に価格を定めます。


この場合、

・価格は競争によって動かない
・市場は検証の場にとどまる
・価格決定主体は固定される


という構造になります。

6.買取型

― 目的限定型の価格決定 ―


買取型では、価格決定主体は不動産会社となります。


競争は存在しませんが、

・迅速性
・確実性
・秘匿性


といった目的が明確な場合には、合理的な選択となることもあります。

7.売却方法選択とは「価格の決まり方」を選ぶ行為

士業に求められるのは、

・どの方法が高いか
・どの方法が早いか


を決めることではありません。

価格が、誰の判断で決まる構造を選ぶか。


それが売却方法選択の本質です。

結語

売却方法の違いは、価格の「付け方」の違いではありません。価格の「決まり方」――すなわち、価格決定主体の所在の違いです。本稿が、先生方が案件ごとに適切な価格決定構造を選択するための整理軸となれば幸いです。

※本ページの内容を説明しても、依頼者が価格や売却方法の判断に参加できていない状態
(「すべて任せるので決めてほしい」という状態)では、士業が判断を代行することにより、
責任が不必要に集中するリスクがあります。このような場合は、「⑤ 瑕疵物件の判断放棄構造」をご参照ください。



── 先生方からの「よくあるご質問」 ──

その他のご質問は、下部の「質問集」からご覧いただけます。

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